『ヒノキスギノキ時々ヤルキ』3続

「……ん?」
おっかしーなー僕何か彼女を怒らせるような事をしただろうかと言うかそもそも
怒ってるからと最速でタマを殺りに来るようなアグレッシブな性格じゃ無かったんだけどそう言えばまだ僕生きてますよ。


ふと意識が外界に戻ると、ガチで拳を振りかぶっていた彼女の表情が今度は「何か気になる」に変わっていた。
そしておもむろに人中を打ち抜くはずだった手が僕の顔を掴む。いや、厳密には僕が顔に付けていたモノを。
くい、くいっ、とそれをずらして、彼女は納得したような表情を見せた。
「……不審者にしては妙に見慣れている気がしたが、キミだったのか。道理で」
なるほど。つまり貴女はこの
『花粉シャットール(立体裁断マスク』と『Wクリアメガネ(保護メガネ』
で完全装備していた僕が誰だか分からなかったと仰るわけですね?
「酷いよヒノカ。なんで僕が不審者扱いされるのさ……」
「普段の君が、立ち振る舞いに限れば立派に挙動不審だからだ。それこそ人相を隠したら不振人物の手本になれるくらい、な」
あー、僕はいま泣いても良いのかな?良いよね?
「でも私がはやとちりしたのは確かに悪かった。だから――」
そこまで言いかけて、ヒノカは上体を前に倒すと僕の顔を挟むように床へ手を付いた。立ち上がためなんだろう。
でも僕の肩の上に膝を付いてる、と言うか押さえ込んでるから息をのむ程間近にYシャツの白い楽園がー!?
「……よっと」
いやなんで僕の上で姿勢を整えますかヒノカさん。
僕の薄弱極まりない大胸筋に大変な感触がするし主観視界で下側には危ういひらめきが見えましt何か両頬がふにって!!
「あああああああの、ヒノ、ヒ、ヒノカ?」
「お詫びと言っては何だが、もう少し君の上に乗っていよう。ドキドキワクワクな私の感触を堪能してくれたまえ。
 なんなら”覗いて”も良いよ?」
「僕が人として終わる前にお願いだから退いてヒノカー!!(泣」
「ナニそれ!ずるい!俺も俺もー!!」
イチヨシ貴様あの状況がどれだけ危険か分かってないなコンチクショウ。何だかナチュラルに殺意が沸いてきたっ。
「イチヨシも……か?」
ヒノカが怪訝極まりない顔でイチヨシを見る。いやいやヒノカ、そこはもっと侮蔑して良い所だよ?
「うむ!俺もハァハァしたいー!」
「……」
「……まぁ、私は別に構わんが」
構おうよ!?
「しかし、イチヨシも変わった趣味があるんだな。奇襲の危険に晒されて興奮するとは相当だぞ?」
「ナニソレ」
僕もヒノカの発言が理解できない。どういう介錯でそうなるんだ?
「誤解に基づいて行った奇襲でコイツに迷惑をかけたからこそ、今のサービスタイムだ。
 よって私の過失が存在しなければドキドキサービスも成立しない。
 必然、イチヨシが私にねだっているのは単に出会い頭の奇襲でしか無いわけだ」
論理が無茶苦茶だよヒノカ良いぞもっとやれ。
「や、俺はもっとこうフトモモとかこう、性的に興奮したいのですが」
「心配しなくても、思う存分に豚のような悲鳴をあげさせてやる。明日が楽しみだな?」


明日は完全防護止めとこうかな。何やら雨が降るとか言ってたし。