『ヒノキスギノキ時々ヤルキ』2

三月。
朝晩は流石にまだ寒いけど、昼間のそれも良く晴れた日の日向ともなれば中々に快適だ。
特に今日は風が殆ど吹いていないから、久々にやってきた屋上もくつろぐには悪くない。
「そろそろ本格的に春だぇっしょい!!」
空気を読まないくしゃみが人のセリフを遮りやがりましたよ奥さん。
ほらこう言っている間にも二発目が。
あーm三回目。四回m五k六。
「…………ねぇイチヨシ。いつも思うんだけどさ」
一緒に屋上へとやってきた友人に声をかける。しかし我が友は聞いてるのか聞いてないのか分からないよF××k!
「なんで花粉ってのはこんなに人を苦しめるんだろうねぇ。
 大体、花粉花粉って皆は言うけれど、実際に花粉を見た事なんか無いよ?
 そもそも花粉ってのは本当に存在しているのかな」
「そりゃお前、目に見えないモノなんて幾らでも有るだろうよ。
 世論とか、ウィルスとか、放射線とか大宇宙の意志とかな」
「なんだよそれ!つまり僕らはいつも目に見えないモノにばかり踊らされてるって事じゃないか!
 どうしようイチヨシ!?」
「踊ってれば良いんじゃね? 踊らせてる奴が度肝抜かす位に強く激しく踊ればいーんじゃね?」
「やだよメンドイ」
イチヨシの提案を一蹴して寝転がる。イチヨシはイチヨシで気にした様子もなく、
購買で買ってきたヤキソバパンのヤキソバを一本ずつ抜き出して並べる作業に没頭していた。
いつもながら変な奴だと思う。
まぁそれを言うならば、三月の後半丸々が自由登校なこの時期にわざわざ学校にいる僕も僕なのだが。
ともあれ、見上げた空は穏やかで日差しは暖かい。人の少ない学校は平和と呼ぶにも静かすぎる。実に良い気分だ。


この目元を無性に痒くさせる、花粉さえ無ければ、の話なのだけど。