まだ書いてる

Web拍手より


>なかなか面白そうだー>序章
ありがとうございます。
発想十秒構想三十分制作即興と言うきわめてジャンクフード的な作品ですが、
せめて匠バーガーくらいにはなれないものかなぁ、などと思いながら今日も一筆。



『契約 〜 The biginning〜』


 歩兵は突撃銃を手に走り、空では戦闘機が音速で飛び交いミサイルは成層圏を飛び越える。
そんな時代に、剣と言う武器はあまりにも旧く心もとない存在でしかない。
 そのはずなのだが。
いま少年の前に突き立った剣はそう言った常識やら何やらを問答無用に捻じふせる何かを感じさせた。
 剣、と表現したもののその形は拳銃に近い。グリップと砲身の角度をそのままに、
砲身部分をそのまま剣の刀身に置き換えればこの白い剣を正しく説明できる。
 そしてグリップ部分の根元。有機的な──血管の様、とも言える──装飾の中央に
深朱の輝きを放つ拳大程の石らしいものが埋め込まれている。
 誘惑されたように、と言うと正しくないだろうか。しかし確信のある行動でも無い。
ともあれ少年は半ば放心した状態でゆっくりと剣へと近づいていく。
そしてその手が剣の柄へ触れようとしたとき──
『お止めなさい!』
女性の声がそれを制した。
 明白に行為を咎めたと分かる声に少年が身を竦めて辺りを振り向く。
だがいくら周りを見渡しても、瓦礫を遠巻きに見ているだけの人間や
下敷きになった者を助けんと己の無力を嘆く人間しか見当たらない。
そう、誰も彼もが一人として(・・・・・)少年の事を気に留めていなかった。その傍ら、手に触れる程に近い剣を含めて、だ。
 そこに至って少年は自分の行動の不自然に気付く。そもそもその声は自分の前から聞こえて来た。
『貴方が触れようとしたものは国防法第四十七章十二条によって定められた特級機密に分類されます。
 つまり、本来ならば視認するだけでも司法取引無しには国防軍から開放して貰えないのですよ?
 ですがこの緊急事態を考慮すれば、後々特例が発令されて例外処理される事は確実です。
 悪い事は言いません。私の事は見なかった事にして、早く避難なさい』
 だがその言葉に少年は従わなかった。彼の中の何かがその言葉を頑に拒否していた。
その理由は本人にさえ分からない。ただひたすらに、少年の中の何かがその剣を取れ、と命じている。
『……そうですね。私の認識障壁を無抵抗で通過してきたのでした。それならばあるいは……』
 一瞬の沈黙は、恐らくはその声の主が悩んでいるのだろうか。
それが正しいかどうかはともかく、女性の声が次の言葉を吐く。
『……私の事を知らず、しかし確かに私を見据え私を手に、と望む貴方に問いましょう。
 貴方は悲劇を背負った事がありますか?』
 兄の様に慕っていた隣家のシェワールド兄さん。学校の友達アールバの父親。そして従姉のリメーナ姉さん。
それだけの悲しみを既に少年は得ている。
そして何より、その列に国防軍のファイターである自分の父親が加わらないとは誰も保障出来ない。
 何かを考える寄りも早く、少年の首は縦に振られていた。
『……次に。貴方が薄々勘づいている様に、確かに私を手にすれば幻獣と戦う事が出来ます。
 しかしそれは同時に、国防軍の人たちから犯罪者として追われる事にもなります。
 その覚悟はありますか?』
 迷った。だが足は一歩前に出ている。
『……では最後に』
 一度言葉が途切れる。その空白の意味が少年には分からなかった。
だがその後に続いた声には、悲痛さとも懇願とも言える何かしらの感情が込められていた。
『それでも貴方は──』


『私の力で、皆を救いたいと願うのですか?』


その言葉に込められた感情に、少年は返すべき言葉を迷う。
だから言葉の代わりに澱みない動作で手を伸ばし、白い剣の柄を握りしめた。


 少年の世界が一変した。
 感覚は鋭利かつ鮮明。
 空気の流れがまるで視覚するように読み取れる。
 呻きと助けを求める声は、即ち被災者の現在位置だ。
 体が軽い。いや、この表現は正しくない。
 内から自然と漏れだす何かの力だけで自然と浮き上がる体は、もはや軽い重いと言う範疇ではない。
『今から貴方が私の使い手(my master)です。私の名前はセーリィ。我が主人(マスター)の意志を叶える一振りのチカラです』
 その仰々しい言葉に少年は照れた様に頬をかく。『ご主人さま』と呼ばれるのが気恥ずかしいと呟いて。
『……分かりました。では、貴方が呼ばれたい名前を教えてください』
 少年が口を開く。その名は──



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純粋に平和を願った少年と、罪を背負った兵器と、
それを取り巻く人々が織りなした戦記。
奇跡ではなく、必然でも無く。
ただ人が生きる事を願った時に振るわれた剣の軌跡。
誰かの意思ではなく、しかし誰もがその胸に抱いていたモノ。


『ミンナのキボウ 〜 The Bravery fantasm 〜』


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長くなりましたが、これにてプロローグ終了。
次回が本筋第一回目と言う事で。