十二時間

不慮の事態的な面もあるのでぐだぐだ言う気はありませんが、
消耗した体力ばかりはいかんともしようがなく。



―― 3rdRide:War ――(3rd)


国が滅ぶ、との言葉に少年が僅かに身を硬くした。
黒剣の青年はそれに構う事無く、或いは敢えて無視して、続きを語り続ける。
「我々は国民を守る事が、ひいては国を守る事が存在意義だ。
 『金がかかるから』と来るか来ないかあてに出来ない少年を待っている訳にはいかないのだよ。
 だから幻獣が出れば軍もでる。だが戦闘機が飛べばどれ程大気中の燃素を活用出来たとしても
 液体燃料の費用がかさむしそもそもミサイル等は節約のしようがない。
 そして三週間に十五回と言う出撃ペースは戦時下のそれに近い。
 君には、国家の戦争がどれほどの膨大な出費を呼ぶか分かるか?
 いま、ライトヘイル共和国軍の予算はそれくらい急速に予算を圧迫されている。
 異常なまでに幻獣が集中している事を世界中に訴えたところで、
 強国の腰が動くまで年単位の時間がかかるだろう。
 彼らにしてみれば、我々が枯渇寸前まで追い込まれて持ちこたえる位の方が都合が良いからな。
 ……否定しようの無い事実として、ライトヘイルは弱小国だ。
 自分達の身を守る為に、手段の是非を問う余裕は無い」


突きつけられている黒剣の切っ先に沿って、青年の言葉は少年を射抜く。
大人達の現実と言う重みを載せて。


「君がヒーロー気取りな只の子供か、覚悟を据えた一介の戦士なのか。
 私には量りかねるが、どちらにせよ私のすべき事は変わらないのだ。
 おとなしく『セーリィ』を渡して欲しい。でなければ、実力行使に訴えなければならなくなる」


少年は返す言葉を持っていなかった。
人を助ける事が何故責められなければならないのか、との憤りが沸き上がり
しかし年不相応な聞き分けの良さがそれだけでは駄目なのか、と懊悩する。
少年の苦悩が伝搬したかの様に、青年もその顔を苦渋で染める。
だがそれは一瞬の事。
「……悪いが、今は君の悩みに答えてあげる余裕が無い」
青年は、最初から悩みを排してその黒剣を握っている。故に彼の行動は素早かった。
「いつか、それが正しかったのかどうかと言う問いは君を強くしてくれるだろう。
 今は大人の理不尽に振り回されて、その憤りを明日の糧にする事だ。
 右手の『セーリィ』、渡して貰うぞ!!」


青年が、左手の黒剣を振りかぶった。


To be continued, 3rdRide.



ぬーん、「政治」の折り込みかたは研究の余地がたっぷり。
元々がSTGのプロット案だったとは思えない流れですな。