書けや書けや

まとめページの作成とどっちを優先するか悩んだのですが、本編再開と言う事で。

その前にWeb拍手
>23:10の。
見 ら れ て た ー ! 口調からしてD氏でしょうか!?
いえあのサボってた訳ではなく結構真面目に悩んでたのですよ具体的には生かすか殺すか。



── 2ndRide:Independence ──(2nd)

 物陰に潜み息を殺す。
近くを通る足音に反応して飛び出しそうになる心臓を、必死に口を閉ざして押さえ込む。
 セーリィの強化を受けた聴覚でも分かるほどに足音が遠ざかり、
やがてそれが途絶えたのを確かめると少年は素早く立ち上がった。
 そして目の前に並ぶ物を乱雑に掴むと、音を立てぬ様にしかし素早くその場を離れる。
 全ては迅速に、そして誰も気付かぬ間の出来事だった。
これが初めての作業である事を考えれば、その手際は決して悪くない。

 万引きの手際が良かった所で、誰に自慢出来るというものでも無いのだが。

 あぅあぅ、と見るからに意気消沈した鳴き声(?)を漏らしつつ、少年が万引きしたての弁当を口に運ぶ。
郊外を大回りする道路沿いに建てられていたガソリンスタンド兼コンビニエンスストア
それを発見したのは良かったのだが、少年の財布の中身は僅か550ドラインしかなかった。
 具体的に言えば、コンビニの裏口で搬入作業中だった弁当を一つ買うと殆ど残らない額である。
『……コンビニのお弁当なんて、だいたい搬入した内の何個かは破棄になるんです。
 あまり気に病んでると、折角の食事が美味しくなくなりますよ?』
 そう言うセーリィの口調も何処か白々しかった。
少年は視線を逸らされている様な気がしていたが、そもそもセーリィには視線自体が無い。
『私の認識障壁を使って食事を勝手に分けて貰う、と言う最低ラインが確保出来ただけでもマシだと思って下さい』
 少年は素直に頷くが、やはりその顔は浮かない。もそもそと重い空気の下、気まずい沈黙の中で食事を終える。
 それを待ち構えていたかの様に──
『!!』
空が黒く歪んだ。
 幻獣達が現れる直前に見られる特異現象の一つだ。
すかさず少年はセーリィを手にして、意気揚々と空へと飛び立つ。
 ある意味自業自得ではあるが、今の境遇を八つ当たるには丁度良い相手がやってきたのだから。

 現れた幻獣達は昨夜交戦したのと同じタイプが殆どの様だった。
爬虫類の様な翼と鋭い鍵爪を持つ「悪魔型」に、一見すると只の大きい鳥ながら口から光弾を吐く「鳥型」。
 それとやたら数だけは多い「羽虫」。
 どれもセーリィの火力ならば鎧袖一触で撃ち落とせるモノばかりである。
 昨夜の経験から来る慣れと強敵が居そうにない安心感もあり、
少年の戦い方は全力を尽くすと言うよりも限界を確かめる動きに近い。
 「悪魔」の振るう鍵爪の有功距離を確かめ、皮一枚程の誤差を修正していく。
 「鳥」の吐く光弾の速度を見極め、斬撃でかき消す事が出来る限界距離の確認、
敢えて直撃を一発受ける事でセーリィの防護障壁にどれだけ支障が出るかも検証。
 遠くに居る「羽虫」を相手に銃撃の有効射程の認識と照準の合わせ方を微調整していく。
 セーリィがもたらす圧倒的な戦闘力に対抗出来る幻獣が現れる気配は感じられない。
結局、空に生じた「歪み」が消えてから幻獣達が全滅するまでにそれほど時間はかからなかった。
 しかし他愛ない、と言う感想を抱くにはまだ早い。
少年にしてみれば此処からが本題であり、難題でもある。

 当然ながら、幻獣が現れた時に戦っているのは少年だけではない。
セーリィの火力に巻き込まれまいと遠巻きながら、国防軍の兵士達もまた幻獣と死闘を繰り広げている。
 むしろ、国防軍と幻獣との戦いこそが幻獣掃討の本来の光景だった。
ただしそれは何時間単位、時には数日かけてやっと殲滅に至ると言うものではあるが。
 そして今も少年の周囲を国防軍の主力兵器が取り囲んでいる。
 幻獣襲来に戦線を即時展開する為の戦闘機に、最高速度よりも小回りが厄介な幻獣に対応出来る主力の戦闘ヘリ。
どちらも主兵装は対幻獣用の特殊機銃で、基本的にはセーリィの守護障壁の前には無力だ。
 だが少年を取り巻く空気は敵意とも戦意ともつかない緊張感で溢れている。
その刺々しい感覚に、セーリィは少年と周囲の空気を感じ取る超感覚の共有を絶つ。
まだ幼いと言っても差し支えない彼を、国防軍人が放つ大人の戦意に晒すのは酷だろう、と。
 少年が足元を盗み見る。
トレーインバッゼはいつもと変わらぬ様子で海上に浮かび遊浪していた。
 だからと言って気安く其処に戻る事は出来ない。
昨夜と違い、今はまだ太陽が頂点に届かぬ程度に早い昼。
いま足元の遊浪大陸に降りれば、何処に少年が降りていくかは完全に筒抜けとなる。
 そうなれば国防軍に追跡の段階を踏み越えて包囲・確保の為の行動を起こされてしまうだろう。
周囲をゆっくりと取り囲み始めた国防軍の兵器を、少年は一度振り切ってしまわなければならない。
 少年にとって幻獣戦よりも過酷なエアチェイスが始まった。

To be continued, 2ndRIde.


長くなったのでいったん切り。
もう一丁載せて2ndRideは終わる予定ー