製作能

「鈴蘭畑のオフィーリア」とか流しながら聞くと丁度良いかも知れません。
楽曲に頼ればそれなりに文章へ美化補正がかかるでしょうし。



―― 4thRide:Dragon ――


『それは人々の絶望が如く大きく、人類をあざ笑うかの様に強過ぎた』


空で闇が口を開けていた。
見あげる視界の殆どを覆うその「黒」が、何を意味するのか。
その場に居た殆どの人物がそれを知っていたにも関わらず、
各々のスケール感を無視した光景に麻痺させられた頭は結論を導けない。
故に、その「闇」の意味を正しく察知しているのは二人と一名だけだった。
「……な、んだと…………!?」
『こんな、大きいモノが…………!?』
「剣」を持つ二人と、ソレに宿る意思が驚愕に冷たい汗を流す。
黒い空間の半径はおよそ2km。
空を覆う程に大きく見えるのは、それが少年達に至近した高度に有るからだ。
それらの意味を整理すると


──直径4kmの門でなければ通れない体躯の持ち主が、
  いま正にトレーインバッゼの直上に表れようとしている、と言う事になる


青年が、口元に有るヘッドセットのマイクへ何かを伝えようと口を開く。
だがその機先を制する様に誰かの悲鳴が上がった。


──何だよありゃあ!あれが腕だって言うのか!?


「黒い門」から、黒い鱗に覆われた爬虫類の様な腕が出ていた。
その三本と一本の指先には、もはや刃としか呼べないような爪が生えている。
当然ながら腕だけでは無い。
見るからに窮屈そうな挙動で、腕の次に頭が、そして肩、胸、腹と徐々にその全身が顕現していく。
それはまさに「竜」だった。
頭部と脊椎にそってV字状に二本の角らしきモノが生えていて、その全身は黒の鱗で覆われている。
頭部から尾の先端までの全長を誰かが推し量ろうとしたが、余りに巨大すぎて感覚が混乱している様だった。
誰もが許容量以上の驚きを叩きつけられている中で、竜がその口を開く。
『≡≡≡≡≡≡≡≡!!』
とっさに身構えた二人の意に反し、竜はその口から火を噴くでも無く単に吠えただけだった。
その咆哮が音の領域を超えた衝撃波となって宙域を殴打する。
国防軍の戦闘機の何機かが、衝撃に耐えきれずに瓦解して破片を海へと降らせていった。


To be continued, 4thRide.