睡眠リズムが落ち着きません。
睡眠と言うよりは、生活リズムと表現するべきかも知れませんが……



── 2ndRide:Independence ──(4th)


 トレーインバッゼから離脱してどれほど時間が経っただろうか。
 大陸から離れれば離れるほどに国防軍機は補給のため帰還する必要を迫られるが、少年に補給は必要ない。
まだ一機だけ戦闘機が追従しているが、既に二機が帰還している事を考えればそう長いこと追い回されはしないだろう。
 見渡す限り青一色の世界を、少年と戦闘機が飛翔していく。
 しばらくして少年はその戦闘機に違和感を覚えた。自分に追従しているその挙動が何か違う、と。
先ほどまでは三機が三機とも、言うなれば戦闘機動とも言うべき実戦の動きだった。
 だがいま追従してくる戦闘機は、それこそ単に付いてきているだけだ。
『……少し、併走してみましょうか』
 セーリィが神妙な声で提案してくる。今は共有してない第六感で何かを感じ取ったのだろうか。
言われた通り、速度を落として戦闘機と併走する。搭乗者の様子を伺うが、特に行動を起こす様子もない。
 そう思っている内に操縦者が僅かな動きを見せる。
握った右手を少年に見えるように掲げ、親指を立てると少しだけ前へと動かした。
「――――」
 それを見た少年が、一瞬だけ息を詰まらせるとパイロットにも見える様に大きく頷く。
するとそれが決められたやり取りだったかの様に、戦闘機はあっさりと進路を変えて
空に大きく弧を描くとトレーインバッゼの方向へと去って行った。
 父さん、と小さく呟いて少年が戦闘機を見送る。セーリィは特に何も言わない。
彼女は、男子が泣いてる時は下手に触れないが一番だと知っている。だから言葉も気遣いもその後だろう、と。



 夜の海を飛ぶ。
偶然見つけた無人の遊浪島で休憩してから、トレーインバッゼへと。
 新月間近の夜は暗く、はるか彼方に有るトレーインバッゼの明りがよく見えた。
 あんなに明るいんだ、と呟いた少年に
『明るければ良いと言うものでもありませんけどね……』
とセーリィは意味深に返す。思わず少年はその真意を問うた。
『明るいと、お弁当を持ち出しにくいでしょう?』
 聞かなければ良かった、とうなだれながらトレーインバッゼに上陸する。
上陸地点は、朝に弁当をくすねたコンビニの近くだった。



 マーツェル・オドレイはしがないコンビニ店員である。
トレーインバッゼ郊外の幹線道路沿いの店舗で夜間から朝にかけて働く彼の人生は正に平凡の二文字。
波瀾も感動も特にない。半年程前に強盗に襲われた事は意図的に忘れておく。
 そんな彼の仕事場に、ちょっとした異変が起きていた。ここ五日程、納入される品物の数が合わないのである。
それも毎日一個、決まって何故か弁当類が、だ。
しかも顔見知りとなって久しい運送屋と話をするに、どう考えても店に納入する直前で数が減っているとしか思えない。
 だが、万引きされているのかと見張りを付けてもそれらしい人影すら見当たらない。
しかし確かに弁当は減っている。
 また本社に叱られるよ、と胃を抑えて呻く運送屋を見送りマーツェル・オドレイは考えた。
消えるのが弁当類と言う事はその目的は明らかに食料であって、その食欲を満たせれば弁当の納入数が減る事も無い筈。
 ならばいつも明け方頃に破棄する食品類を、店の裏に分かりやすく置いておくのはどうだろうか。
 その夜、マーツェル・オドレイはその発想を無断で断行し成果が見事に発揮された。
実に嬉しそうに感謝の言葉を捲くし立てる運送屋に手を振り、マーツェル・オドレイが自宅に戻ろうとした時である。
幻獣襲撃の警報が鳴り響いた。
 ここ数日、幻獣達の襲撃頻度が異常に増加していたが、マーツェル・オドレイは避難先に急ぐ事はしない。
すぐに彼の頭上を白い光が駆け抜けていき、瞬く間に幻獣達と交戦したかと思えば既に幻獣達は追いやられ始めていた。
 既に見慣れた光景を見上げながら、幻獣警報の鳴り響く道を歩いていく。
数日前までは想像すらしなかった行動だ。
 感謝したところで何かが伝わりどうにかなるとは思ってなかったが、それでもマーツェル・オドレイは呟いた。


「まぁ、何だ。頑張ってくれ少年」



2ndRide is over. Please wait next Ride.



量的にも時間的にも〆るまで長くなってしまいました。
如何に梳野が戦闘シーン以外が実は苦手かと言う事の表れですなぅ。