ことば

言いたい事、言わなくちゃならない何かが
叫び出しそうなほどに膨らんでいても、この口から外には一言も出てこない。
だけど内に積もったことばたちは腐っていき、いつかは溶けて消え失せてしまう。
そうやって、一体いくつの無くしてはいけないものが亡くなっていったのだろう。
それは改めて問えば絶望と呼ばれるもので、
いったいどれほどの絶望を梳野は既に抱えてしまったのか。
けどそんな事よりも、この絶望を正しく伝えられない事の方が、
よほど、膝を屈しかねない深い絶望なのだと。いったい誰が理解してくれると言うのか。
だからこそ。


この筆を、何の為に握った?